Shintaro.media
竹内 瑠璃さんVol.2
utsuwa
08

小さくても見せ場があり、自分の個性が表現できている…
そんな「華」のある作品に一歩でも近づきたいと思っています。

竹内 瑠璃さん

九谷焼

奈良県大和郡山市生まれ。
OLを経験したのち、作陶の道へ転向。
2006年 京都伝統工芸専門学校(現・京都伝統工芸大学校)卒
山本長左氏に師事、4年間陶磁器絵付け(染付)を学ぶ
2010年 石川県立九谷焼技術者自立支援工房にて3年間制作活動を行う
2013年 石川県小松市にて独立


「陶箱」には、描かれた物語を“探す”おもしろさがあるんです。

平面ではなく立体のモノに描きたい、そこで「物語」を表現したいと、今まで香合や水滴などにさまざまな絵を描いてきました。最近とくに描く楽しさを感じているのが、陶箱。

陶箱って、形は香合と同じようなものと言えますが、サイズが大きい分、香合よりも表現できる幅が広く、色々な描き方ができる面白さがあると思います。絵付けをするにしても、手前と奥、内と外、蓋と底……いろいろな面があるんです。

そして、それぞれの面が別々なのではなく、正面から回り込んでいくところや、見える部分から見えなくなるような部分への移り変わりなどもあり、本当に奥深い魅力があると思うんです。

一度にすべてが見えないから、使い手がくるくる回して見ることで、「あ、ここにもおもしろいものがあった!」って発見できる楽しみがありますよね。

使い手のそんな姿を想像することで、作り手も楽しみながら描くことができる、そんな魅力的な器なんです。

これからもずっと、“生”の自分が表現できる作品を求めていかないと、と思っています。

私が絵付けをする器の素地は、別の方につくっていただいていて、素地をつくる方も全力で最高のものをつくってくださるわけです。

だから私が絵付けで失敗してしまうと、その人の作品をこわしてしまうことになる。

できるだけその素地の形を活かした絵付けが大切なんです。

また、香合のつまみや手びねりの作品は自分で作っていて、そこで自分なりの個性も表現できたらいいなと考えながら、作品と向き合っています。

絵を描く作業についてはすべて自分でやっていて、机に座って黙々と手を動かすばかり。

なかなかに孤独な作業ですが、自分がこだわる部分でもありますし、いろいろな物語を妄想しながら愉しんでいます(笑)。

小さな作品であっても、見せ場がきちんとあるモノ。その見せ場がしっかり目を引くように描かれていること。その中で、自分の個性が表現できていること。そんな「華」のある作品に一歩でも近づきたい一心で、日々、器と向き合っています

Shintaro.mediaより

ニューヨークでは、瑠璃さんの作品は「Microscopic Craft」と呼ばれています。

そして、ギャラリーに来るお客さまは、瑠璃さんの絵付けのことを詳しく聞き、そのプロセスに共感し、ご購入になるといいます。

器や作品の第一印象と、その作家さんの思考やご苦労されていることにまで踏み込んで好きになる…まさに作品と人となり、ですね。

この日本でも、瑠璃さんの小さな作品の中に埋め込まれたストーリーや思いを感じていただきながら、手にとっていただけると嬉しいです。